会場:京都造形芸術大学 春秋座
4日間に渡って実際の劇場設備を使い、代表的な合計7社11機材のLED灯体に、同一条件下で基本的な舞台演出表現に使われる5種類の制御を行い、その特性を比較した。
アナログ照明灯体の代用ではなく、LED照明全般に特有の舞台表現に有効な特性を探る。
各LED灯体の欠陥を比較検証するのではなく、それぞれ機種の持つ舞台表現に有効な特性を探る。
実際の劇場を使用する事で、現実的な使用パターンに則したLED照明灯体の可能性を探る。
◆比較条件
灯体種別 | メーカー | 型番 | 使用電力(W) | 重量(kg) | DMX ch数(ch) |
ハロゲン球 | ETC | Source Four 26° + LEE#201 | 500 | 6.4 | 1 |
LED | ETC | Source Four LED S2 Lustr | 130 | 8.3 | 10 |
ETC | Desire D40 | 110 | 6.4 | 9 | |
Color Kinetics | ColorBlast 12 | 50 | 2.2 | 3 | |
Color Kinetics | ColorBlast TR | 50 | 2.6 | 3 | |
ROBE | ROBIN Actor6 | 450 | 8.0 | 37 | |
TSJ | BOLD 18Q IP | 120 | 5.5 | 10 | |
TSJ | BOLD 12Q | 74 | 3.6 | 10 | |
Martin | MAC Aura | 260 | 5.6 | 25 | |
Martin | MAC 101 | 120 | 3.7 | 12 | |
USHIO Lighting | Nick NRG1201 | 340 | 10.5 | 20 | |
Playtech |
EPAR64LED ※安価な参考機材のため暗く、 2灯同じフォーカスで吊って使用。 | 20 | 3.0 | 6 | |
Color Kinetics |
ColorReach Powercore 他と条件が違うため(床置き)参考比較 | 270 | 34.0 | 3 |
- 比較条件としては、図のようにバトン2列に各灯体を吊り、バトンの高さを6.5mに設定。その各灯体から顔に当たる光の角度が約60度になるように、吊ったバトンから2.5m舞台奥に、市販の白いTシャツを着た人物と、高さ1.8mの細長い板に色画用紙のR,G,B,C,M,Y,W,Kを貼付けたカラーバーを配置。
- ズーム機能のある機材に関しては、ETC Source Four 26° + LEE#201(両バトン共に舞台中央位置に吊り込み)のレンズをいちばん前に出した状態での舞台床面のフォーカスサイズに合わせる。
- 舞台の状態は、床はグレーのリノリウムでカバー、舞台奥は大黒幕。
- 灯体の制御は、MA Lighting社製MA onPC command wingを使用。
◆比較制御
各バトンごとに、吊ってある灯体を全部をいっせいに動かす。白/全点灯時は、全てのLEDドットが100%点いている状態とする。
- 全点灯30秒のフェードインと30秒のフェードアウトを、2回繰り返し。
- カメラ:SONY PMW-EX3
- シャッタースピード:1/60
- ホワイトバランス:4800
- F値:6.8
1.
MAC Aura2.
MAC 1013.
Source Four 26° + LEE#2014.
Nick NRG12015.
ROBIN Actor66.
BOLD 12Q7.
EPAR64LED8.
Source Four LED S2 Lustr9.
Desire D4010.
Source Four 26° + LEE#20111.
BOLD 18Q IP12.
ColorBlast TR13.
ColorBlast 12 - 暗転から1/255, 2/255,と8bit制御の1ポイントを3秒刻みで上げて、20ポイントまで上がったら逆に減少。これを2往復。16bit制御が可能な機材は、16bitモードで制御。
- カメラ:SONY PMW-EX3
- シャッタースピード:1/60
- ホワイトバランス:4800
- F値:1.9
1.
MAC Aura2.
MAC 1013.
Source Four 26° + LEE#2014.
Nick NRG12015.
ROBIN Actor66.
BOLD 12Q7.
EPAR64LED8.
Source Four LED S2 Lustr9.
Desire D4010.
Source Four 26° + LEE#20111.
BOLD 18Q IP12.
ColorBlast TR13.
ColorBlast 12 - R,G,B,W(今回は各機材のLEDドット全てが点灯している状態)の、クロスフェード。最初は暗転から17秒かけて赤へ、3秒赤の全点灯から17秒かけて緑の全点灯へ移行し、3秒間緑全点灯を維持。以後、同じ時間間隔で動き、3回繰り返して最後は白(全点灯)から17秒でフェードアウト。
- カメラ:SONY PMW-EX3
- シャッタースピード:1/60
- ホワイトバランス:4800
- F値:6.8
1.
MAC Aura2.
MAC 1013.
Source Four 26° + LEE#2014.
Nick NRG12015.
ROBIN Actor66.
BOLD 12Q7.
EPAR64LED8.
Source Four LED S2 Lustr9.
Desire D4010.
Source Four 26° + LEE#20111.
BOLD 18Q IP12.
ColorBlast TR13.
ColorBlast 12 - 全点灯と暗転のストロボ効果を、60bpm, 120bpm, 240bpm, 360bpm, 600bpm, 900bpm, 1200bpm (0.05秒に1回点灯)と、10秒毎に点滅回数を早めていき、上がり切ったら逆に下げていく。1シークエンスのみ。
- カメラ:SONY PMW-EX3
- シャッタースピード:1/60
- ホワイトバランス:4800
- F値:6.8
1.
MAC Aura2.
MAC 1013.
Source Four 26° + LEE#2014.
Nick NRG12015.
ROBIN Actor66.
BOLD 12Q7.
EPAR64LED8.
Source Four LED S2 Lustr9.
Desire D4010.
Source Four 26° + LEE#20111.
BOLD 18Q IP12.
ColorBlast TR13.
ColorBlast 12
◆個別データ収集
各機材の全点灯状態での、人物とカラーバーが入ったアップでの静止画撮影と、スペクトロメーター(スペクトロナビMK-350 /UPRtek)でのデータ収集。
30秒でのフェードイン全点灯から、30秒かけてのフェードアウト暗転までの動画撮影。
※ColorReachに関しては、舞台奥をホリゾント幕にして、舞台前からホリ幕前に立つ人物とカラーバーに対して、他の機材と同じ比較制御とデータ収集を行った。
- カメラ:SONY PMW-EX3
- シャッタースピード:1/60
- ホワイトバランス:4800
- F値:6.8
※他と条件が違うため(床置き)参考比較
◆藤本 所感
-
LED灯体の明るさや色の問題は、技術的にはすでに十分実用できるように開発されて、解決している。価格的には、まだまだ高額の機材が多く一長一短はあるが、問題解決に必要な技術もすでに十分にある。
メーカー 型番 参考価格(定価/円) Martin MAC 101 ¥310,000 Martin MAC Aura ¥680,000 TSJ BOLD 12 ¥6,6000 TSJ BOLD 18Q IP
※Dimmerカーブに問題があり、そのアップグレード版が+1万円¥10,6000 ROBE ROBIN Actor6 ¥400,000 ETC Source Four LED S2 Lustr ¥420,000 ETC Desire D40 ¥320,000 Color Kinetics ColorBlast TR ¥135,000 Color Kinetics ColorBlast 12 ¥170,000
個人的には、LED照明は劇場インフラの整っていない環境でも、デジタル技術を援用したアートパフォーマンス製作の可能性を開くツールでもあると考えるので、その点では照明機材本体の機能は、RGBによる混色調光と低消費電力を生かしたシンプルな設計の方が望ましいと思う。 -
LED特有の立ち上がりの問題を解決するために、独自の補正をかけている機種がいくつかあり、それらはストロボ効果の実験の際、すぐに点滅がついて来なくなった。
もっとも、これらの機種の大半には、「ストロボエフェクトモード」が用意されている。しかし、組み込まれているストロボエフェクトは、通常 0 - 100%の点滅スピード調整であり、例えば明るさ90%と100%の点滅であるとか、違う色相間の点滅はできないことが多い。 - ColorBlast12は、光量こそ少ないもののフェードイン・アウトや高速制御への追従も正確で、色味的にも大きなズレはなく、あらためてシンプルで素直な機材だと実感した。
- ColorReachに関しては、立ち上がりの1/255が明る過ぎて、劇場等で使うのは難しい(もちろん、そういう用途の機材ではないが)。