LED_Study
舞台芸術におけるLED照明の可能性ならびに、デジタルプログラミングとの連動

舞台芸術作品の創造・受容のための
領域横断的・実践的研究拠点
共同研究プロジェクト

SESSION #1

LED照明灯体の評価方法を検討する / 各社LED照明機材比較実験

会場:京都造形芸術大学 春秋座

4日間に渡って実際の劇場設備を使い、代表的な合計7社11機材のLED灯体に、同一条件下で基本的な舞台演出表現に使われる5種類の制御を行い、その特性を比較した。

アナログ照明灯体の代用ではなく、LED照明全般に特有の舞台表現に有効な特性を探る。
各LED灯体の欠陥を比較検証するのではなく、それぞれ機種の持つ舞台表現に有効な特性を探る。
実際の劇場を使用する事で、現実的な使用パターンに則したLED照明灯体の可能性を探る。

◆比較条件

比較実験機材
灯体種別メーカー型番使用電力(W)重量(kg)DMX ch数(ch)
ハロゲン球ETC Source Four 26° + LEE#201 5006.41
LEDETC Source Four LED S2 Lustr 1308.310
ETC Desire D40 1106.49
Color Kinetics ColorBlast 12 502.23
Color Kinetics ColorBlast TR 502.63
ROBE ROBIN Actor6 4508.037
TSJ BOLD 18Q IP 1205.510
TSJ BOLD 12Q 743.610
Martin MAC Aura 2605.625
Martin MAC 101 1203.712
USHIO Lighting Nick NRG1201 34010.520
Playtech EPAR64LED
※安価な参考機材のため暗く、
2灯同じフォーカスで吊って使用。
203.06
Color Kinetics ColorReach Powercore
他と条件が違うため(床置き)参考比較
27034.03
  • 比較条件としては、図のようにバトン2列に各灯体を吊り、バトンの高さを6.5mに設定。その各灯体から顔に当たる光の角度が約60度になるように、吊ったバトンから2.5m舞台奥に、市販の白いTシャツを着た人物と、高さ1.8mの細長い板に色画用紙のR,G,B,C,M,Y,W,Kを貼付けたカラーバーを配置。
  • ズーム機能のある機材に関しては、ETC Source Four 26° + LEE#201(両バトン共に舞台中央位置に吊り込み)のレンズをいちばん前に出した状態での舞台床面のフォーカスサイズに合わせる。
  • 舞台の状態は、床はグレーのリノリウムでカバー、舞台奥は大黒幕。
  • 灯体の制御は、MA Lighting社製MA onPC command wingを使用。

◆比較制御

各バトンごとに、吊ってある灯体を全部をいっせいに動かす。白/全点灯時は、全てのLEDドットが100%点いている状態とする。

  1. 全点灯30秒のフェードインと30秒のフェードアウトを、2回繰り返し。
    • カメラ:SONY PMW-EX3
    • シャッタースピード:1/60
    • ホワイトバランス:4800
    • F値:6.8
    1.
    MAC Aura
    2.
    MAC 101
    3.
    Source Four 26° + LEE#201
    4.
    Nick NRG1201
    5.
    ROBIN Actor6
    6.
    BOLD 12Q
    7.
    EPAR64LED
    8.
    Source Four LED S2 Lustr
    9.
    Desire D40
    10.
    Source Four 26° + LEE#201
    11.
    BOLD 18Q IP
    12.
    ColorBlast TR
    13.
    ColorBlast 12
  2. 暗転から1/255, 2/255,と8bit制御の1ポイントを3秒刻みで上げて、20ポイントまで上がったら逆に減少。これを2往復。16bit制御が可能な機材は、16bitモードで制御。
    • カメラ:SONY PMW-EX3
    • シャッタースピード:1/60
    • ホワイトバランス:4800
    • F値:1.9
    1.
    MAC Aura
    2.
    MAC 101
    3.
    Source Four 26° + LEE#201
    4.
    Nick NRG1201
    5.
    ROBIN Actor6
    6.
    BOLD 12Q
    7.
    EPAR64LED
    8.
    Source Four LED S2 Lustr
    9.
    Desire D40
    10.
    Source Four 26° + LEE#201
    11.
    BOLD 18Q IP
    12.
    ColorBlast TR
    13.
    ColorBlast 12
  3. R,G,B,W(今回は各機材のLEDドット全てが点灯している状態)の、クロスフェード。最初は暗転から17秒かけて赤へ、3秒赤の全点灯から17秒かけて緑の全点灯へ移行し、3秒間緑全点灯を維持。以後、同じ時間間隔で動き、3回繰り返して最後は白(全点灯)から17秒でフェードアウト。
    • カメラ:SONY PMW-EX3
    • シャッタースピード:1/60
    • ホワイトバランス:4800
    • F値:6.8
    1.
    MAC Aura
    2.
    MAC 101
    3.
    Source Four 26° + LEE#201
    4.
    Nick NRG1201
    5.
    ROBIN Actor6
    6.
    BOLD 12Q
    7.
    EPAR64LED
    8.
    Source Four LED S2 Lustr
    9.
    Desire D40
    10.
    Source Four 26° + LEE#201
    11.
    BOLD 18Q IP
    12.
    ColorBlast TR
    13.
    ColorBlast 12
  4. 全点灯と暗転のストロボ効果を、60bpm, 120bpm, 240bpm, 360bpm, 600bpm, 900bpm, 1200bpm (0.05秒に1回点灯)と、10秒毎に点滅回数を早めていき、上がり切ったら逆に下げていく。1シークエンスのみ。
    • カメラ:SONY PMW-EX3
    • シャッタースピード:1/60
    • ホワイトバランス:4800
    • F値:6.8
    1.
    MAC Aura
    2.
    MAC 101
    3.
    Source Four 26° + LEE#201
    4.
    Nick NRG1201
    5.
    ROBIN Actor6
    6.
    BOLD 12Q
    7.
    EPAR64LED
    8.
    Source Four LED S2 Lustr
    9.
    Desire D40
    10.
    Source Four 26° + LEE#201
    11.
    BOLD 18Q IP
    12.
    ColorBlast TR
    13.
    ColorBlast 12

◆個別データ収集

各機材の全点灯状態での、人物とカラーバーが入ったアップでの静止画撮影と、スペクトロメーター(スペクトロナビMK-350 /UPRtek)でのデータ収集。
30秒でのフェードイン全点灯から、30秒かけてのフェードアウト暗転までの動画撮影。
※ColorReachに関しては、舞台奥をホリゾント幕にして、舞台前からホリ幕前に立つ人物とカラーバーに対して、他の機材と同じ比較制御とデータ収集を行った。

  • カメラ:SONY PMW-EX3
  • シャッタースピード:1/60
  • ホワイトバランス:4800
  • F値:6.8
ETC Source Four 26° + LEE#201
Martin MAC Aura
Martin MAC 101
USHIO Lighting Nick NRG1201
ROBE ROBIN Actor6
TSJ BOLD 12Q
Playtech EPAR64LED
ETC Source Four LED S2 Lustr
ETC Desire D40
TSJ BOLD 18Q IP
Color Kinetics ColorBlast TR
Color Kinetics ColorBlast 12
Color Kinetics ColorReach Powercore
※他と条件が違うため(床置き)参考比較

◆藤本 所感

  • LED灯体の明るさや色の問題は、技術的にはすでに十分実用できるように開発されて、解決している。価格的には、まだまだ高額の機材が多く一長一短はあるが、問題解決に必要な技術もすでに十分にある。
    メーカー型番参考価格(定価/円)
    MartinMAC 101¥310,000
    MartinMAC Aura¥680,000
    TSJBOLD 12¥6,6000
    TSJBOLD 18Q IP
    ※Dimmerカーブに問題があり、そのアップグレード版が+1万円
    ¥10,6000
    ROBEROBIN Actor6¥400,000
    ETCSource Four LED S2 Lustr¥420,000
    ETCDesire D40¥320,000
    Color KineticsColorBlast TR¥135,000
    Color KineticsColorBlast 12¥170,000
    ただ、Source Four LED S2 Lustrのようになると、LEDドットの色数が多過ぎて、プリセットを使うか、経験値を高めてこの機材専用のオペレーターにならないと使いこなせない感じがし、これはムービングライトの進化と同じ方向のように思う。
    個人的には、LED照明は劇場インフラの整っていない環境でも、デジタル技術を援用したアートパフォーマンス製作の可能性を開くツールでもあると考えるので、その点では照明機材本体の機能は、RGBによる混色調光と低消費電力を生かしたシンプルな設計の方が望ましいと思う。
  • LED特有の立ち上がりの問題を解決するために、独自の補正をかけている機種がいくつかあり、それらはストロボ効果の実験の際、すぐに点滅がついて来なくなった。
    もっとも、これらの機種の大半には、「ストロボエフェクトモード」が用意されている。しかし、組み込まれているストロボエフェクトは、通常 0 - 100%の点滅スピード調整であり、例えば明るさ90%と100%の点滅であるとか、違う色相間の点滅はできないことが多い。
  • ColorBlast12は、光量こそ少ないもののフェードイン・アウトや高速制御への追従も正確で、色味的にも大きなズレはなく、あらためてシンプルで素直な機材だと実感した。
  • ColorReachに関しては、立ち上がりの1/255が明る過ぎて、劇場等で使うのは難しい(もちろん、そういう用途の機材ではないが)。