LED_Study
舞台芸術におけるLED照明の可能性ならびに、デジタルプログラミングとの連動

舞台芸術作品の創造・受容のための
領域横断的・実践的研究拠点
共同研究プロジェクト

LECTURE #2

DMX/Artnet制御の基本

舞台照明制御の世界的スタンダードプロトコルであるDMX信号の概要を見つつ、新たに採用され世界標準になりつつあるArtNET制御の構造と可能性、そして限界点などを確認する。
例えば、ArtNETの通信プロトコルがTCP/IPだということで、照明制御に利用できるハードやソフトのリソース環境にどのような変化が起こったのか、どのような可能性があるのか、LED照明との併用を意識しつつ専門職の講義と質疑応答、ディスカッションを行った

藤本「今日の講師はタマテックラボの玉田邦夫さんです。照明をどうやって制御しているのか。また近年制御プロトコルこそ変わらないものの、そのデータの送信の方法は変わってきています。それについてお話していただこうと思います。」

玉田「今日はDMXと、Artnetネットワークを使ったDMXの転送をやろうと思います。DMX512は,USITTによって1986年につくられたデジタル伝送方式です。負荷や卓が多様化していく中、プロトコルがオープンで、簡単かつ優れた規格であったために世界的に受け入れられていきました。」

※DMX
TamaTechLab. DMX講座 初級編
TamaTechLab. DMX講座 中級編

※Artnet
当日配布された玉田氏製作の資料[PDF]

◆アナログとデジタル


有限会社
タマ・テック・ラボ

代表取締役 玉田 邦夫

玉田「なぜデジタルがよいのかという話なんですが、アナログでは使っている回路数が増えるとチャンネルの分だけ線が要ります。したがって距離が長いと大変なので、少ない信号線で多チャンネルを送れるデジタルに移ってくるというわけです。またアナログだとノイズに弱いんですが、デジタルはノイズに強いことも利点の1つです。

※調光の方式 TamaTechLab. 調光信号について

一方で、アナログの場合は連続可変ですが、デジタルの場合はON/OFFの信号に変換しなければならないということがあります。どういうことかというと、DMXの場合は8bit256段階なので、どうしても階段状に変化が見える、例えば最初どこかでいきなり点くという問題があるんです。特に、ふつうの白熱電球だとデジタル制御でも分からなかった変化の階段が、LEDだとみえてしまうという問題が出てきました。」

※ただし、LEDが暗転から最初の値で明るく点いてしまうのは、デジタル制御が原因というよりも、LED自体のシステムとして、ある程度の負荷がかかった状態以上でないと仕組みとして発光出来ないという理由の方が、より影響している。

◆8bitと16bit

玉田「そこで階段1つ分をさらに256分割してデータを送る16bit制御という方法があります。DMXを2chつかうことで、256×256=65536段階まで細かく制御できます。」

藤本「けれど下位bitを使ったところで、フェードインのときに65536段階のデータを全部送るというのは無理ですよね?」

玉田「いいところに気がつきましたね(笑)要はDMXは1秒間に最大40回しかデータを送っていないわけですから…」

藤本「(調光の)細かいところというのはDMXを使っている限りはでない?」

玉田「そういうことですね。数秒程度のフェードですと、8bitでやっても16bitでやっても見た目がたいして変わらない、ということはあり得るわけです。」

◆LEDの調光

玉田「電圧を変えることで明るさを変えている電球と違い、LEDは電流をかえて明るさをコントロールします。電圧でも制御できないことはないのですが、安定性に欠けるんです。それで、PWM,pulse-width modulationというんですが、ON/OFFの時間、つまりパルスの幅を制御して見かけ上の明るさを変える調光の方法が多いんです。しかしこのときある一定の幅より暗くすることには限界があるので、どこかの明るさから急につき始めるという問題が起きてしまいます。これを解決するためには周波数を下げてしまうという手があって、そうすると同じパルスの幅でもより暗くすることができる。このように各社工夫をしているんですね。」

※PWM制御 PWM制御

◆制御方法の今後

玉田「ArtnetはTCP/IPに基づいたイーサネット通信のプロトコルで、DMX512信号をイーサネットを介して送受信するためのものです。」

筆谷「Artnetを利用する1番のメリットというとなんでしょうか。」

玉田「やはりチャンネルが増えて256系統でもケーブル1本ですむ、というのが1番大きいでしょうね。また、イーサネットはin/outの区別がない。ただ、ArtnetはDMXと違って常時データを送っている訳ではないんです。データに変化がないと何も送らないので、その間に急に信号を送ると遅れが生じることがある、ということも分かっています。」

玉田「ArtnetにしてもsACNにしても、DMXを載せるものであることに変わりはありません。なので、1秒間に最大40回のデータ転送などはそのままなんです。」

藤本「いろいろな方法で信号を送れるようになったけれど、その中身は変わっていないということですね。ただ、ArtnetになってTCP/IPで送受信できるのは、利便性という意味ではかなり便利になったと思います。」

玉田「はい。でもやはりDMXは今後しばらくなくならないと思います。DMX512-Aを導入するときも、従来のDMX512と互換性のないものは採用されませんでした。Ethernetなどで通信が早くなったとしても、最後のところはやはりDMXという形になるのではないかと思います。」

主な参加者

講師
有限会社タマ・テック・ラボ 代表取締役 玉田 邦夫 氏
株式会社エルム 取締役 桐原 弘 氏
カラーキネティクス・ジャパン株式会社 取締役 井出 英典 氏
藤本 隆行
研究統括
岩村 原太
共同研究者 京都造形芸術大学 舞台芸術学科准教授
筆谷 亮也
共同研究者 NPO法人 アトリエ劇研スタッフルーム 照明班
魚森 理恵
共同研究者 NPO法人 アトリエ劇研スタッフルーム 照明班
粟津 一郎
研究協力者 ダムタイプ
吉田 一弥
研究協力者 NPO法人 アトリエ劇研スタッフルーム 照明班