近年、舞台照明システムとして普及の広がっているLED照明機材は、これまでの照明機材と異なる点が多く存在します。強調されることの多い省電力性もそのひとつですが、他にも、舞台装置と組み合わせても発火の危険性が少ない発熱の低さや、デジタル機材としてのコンピューターとの親和性、RGB光の組み合わせによる発色の高い自由度などが挙げられます。
これらの特色は、まずその照明システムの制御に使われるコンピューター自体のマシンスペックと、制御用のソフトウエアの開発進化により、大きく可能性を広げ続けています。さらに最近は灯体自体の制御システムが8bitから16bitへと移り変わる転換期でもあり、それはつまりデジタル機器であるLED照明システムが、デジタルの強みを残しつつ、アナログの無段階で変化する繊細さも持ちえる状況に、近づいて来たといえます。
ただし、ひとくちにLED照明機材といっても、その開発はメーカー各社のそれぞれのデザイン思想と技量によって特色が異なり、制御用のコンピューター機材全般とそれを使う人間の知識や意識も、まだまだ発展途上といえ、それ故に同じカテゴリーに括られる機材の中でも、様々な特色が存在しています。 そのLED照明の可能性を見極めつつ、コンピューターや他のデジタル機器と組み合わせることで、いかに現行の舞台表現の枠を拡張することが出来るか、そのための実例を実際の空間で試行錯誤を積み重ねてサンプリングすることが、この研究プロジェクトの目的です。